2004/03-a



2004/03/13  レクイエム


あの子は、お星様になりました


03/08
わたしが担当している利用者が亡くなった
直前まで普段どおり過ごしていたのに
倒れてから、病院で死亡確認をするまで
ほんの、1時間半のあいだの出来事だった


病院の霊安室で、
最後のお化粧をしてあげて、と保健師さんに言われた
彼女の身体はまだあたたかくて
その顔はただ、眠っているかのようだった


*
03/09

施設には、朝から重苦しい雰囲気が漂っていた
わたしは、気丈につとめていた
それが、元気そうだと捉えられようとも
施設でも、利用者が急死するということは前例がなく、
緊急の会議が開かれたりしていた
上司の配慮により担当のわたしが、
通夜と葬儀に公務で参列させてもらえることになり
急遽、夜勤も交代する


あの子はアメリカから帰ってきて
(細いからだは、ますます細くなっていた)
こんなときになんだけど、と言いながら
わたしにおみやげをくれた
ぴかぴかのオレンジ色をした、ファイヤーキングのボウルだ
悲しみの空のなかにあらわれた、太陽のような


*
03/10

夜勤明けだったけれど休む間もなく持ちかえりの仕事をし
夜は、通夜に参列した
彼女のお母さんからの依頼で
施設代表で、彼女との思い出を皆の前で話す
こらえきれない悲しさに、
わたしはうまく喋ることができなかった
突然の死を悼む気持ちと、
後悔と自責の念が
涙と一緒にどうっと流れ落ちた


*
03/11

皆より早く出勤して、葬儀に参列する
倒れた瞬間、霊安室、通夜、そして今日の告別式
何度も彼女のすがたを目にしているというのに、
いまだに彼女の死を受け入れることができていない
彼女の表情、声、歩き方や仕草
すべて、鮮明に思い出すことができる
だからこそ、まだそこにいる気がしてならないのだ


出棺を見送ってから施設に戻り、
喪服からジャージに着替えていつもの業務に入る
悲しんでいる暇などない
彼女の死亡時の記録や遺品の整理をはじめ
やまもりの仕事に追われ、あわただしく1日が過ぎてゆく
正直言って、心もからだも限界だ


そうひとつだけ、よいこともあった
朝7時すぎのあの子の電話で
来週のアルビレックスとヴィッセルの試合の
メイン指定席の招待券が手に入った、という知らせだった
ホワイトデーのプレゼントだよ、と
電話の向こうで照れ笑いするあの子に
心からありがとうを言った


そういえば、2年前にも
わたしが仕事でものすごくへこんでいたときに
あの子は突然、かわいいアンティークのハンガーをくれた
きっと当の本人は深く考えてないんだろうから
心遣い、とは少し異なるかもしれないけれど
それでもわたしは、
深く真っ暗な湖の底から救われたような気がしたんだ


*
03/12

長い長い1週間を終えて
ツモリで予約していた品を受け取ったあと
夜は川口くんやちはるさんたちとひさしぶりに飲み会
楽しかったけれど、やっぱり心から楽しめなくて
1次会でおいとまさせてもらった
恋人の迎えをもらい、
ひとりぐらしのアパートへ行く
まだなあんにもない部屋で
からだを丸くして眠った


*
03/13

買ったばかりの食材柄のカットソーを着て
恋人とアパートを出る
駅南でラーメンを食べてから、
最後だから、と、恋人の研究室に忍びこむ
わけのわからない、たくさんの機材のなかに
わたしの知らない恋人がいた
もうきっと、大学へも来ることはないんだろう
家に帰って、アルビの開幕戦をみていたら
いつのまにか眠ってしまった






2004/03/06  やはらかに


真冬みたいなこの場所から逃げ出して、
つかのまの春を感じてきました


水戸への、小旅行


青空の下、可憐に咲く梅の花を、おだやかな光が包む
―春の、世界
すこしだけつめたい風も、その光のなかでやさしく頬をかすめ
かたくしていた体を潤してゆく


偕楽園には、はじめてゆきました
美しく整えられた日本庭園が好き
たとえたくさんの人で賑わっていたとしても、
どこかその厳かさをしっかりと保っているから


夜にはまた、雪降る世界に引きもどされたけれど
きっとここにもあとすこしで、春がやってくる






2004/03/05  いらいら


どうしてこうも、春を出し惜しみするのだろう
おいしい餌を目の前にしておあずけから解放されずに涎をたらす犬になった気分だ
夜勤明けのヴィツ子には、
なごり雪だなんてお世辞にも言えないほどたっぷりと雪がのっかっていて
スニーカーにしみてくるつめたさにいらいらしながら、そのつめたさの素を落とした


些細なことで心に波が立ってしまうのは、
PMSのせいということにしておこう


こういうときは、街へ出てすてきなものを見よう、と
先の見えないほどの吹雪のなか出かけた


伊勢丹がリニューアルして、
ツモリも場所が変わり、倍くらいの広さになっていて
ディスプレイしてあるテーブルがかわいすぎて、すべてが前よりもかわいく見えた
来週には、予約しているお洋服が入荷するらしいので、とても楽しみ


伊勢丹の地下で、キハチのソフトクリームを食べた
それから、おみやげに資生堂パーラーのカレーパンを買って帰った


こうやってわたしは、表皮だけをさらりと、癒されるのだ






2004/03/03  しろいうさぎの背中


口先だけのあまい言葉に惑わされて、いつもあなたを許してきた
期待するだけ無駄、
そんなこと、もう何度も何度も思い知らされてきたのに
一向に学習できないわたしが悪いのかな


色褪せてしまったその糸を、潔く切ることができない理由は、はっきりしている
はっきりしているということは、なんの解決になるわけでもなく
停滞したままその糸はどんどん、色を失ってゆく


鳴る気配を見せない携帯をひらく
答えなんてもう、解りきっているのだ






2004/03/01  原点


あんなちいさな画面のなかの
無機質な文字に一喜一憂させられるなんて
ほんとうに、どうかしている
世の中が便利になればなるほど
失われてゆくものがたくさんになるけれど
悲しいかな、人はそれに気付かないことが多い


あなたの着信音は
その音色をもう、忘れちゃてるよ


*
「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」
完結してよかった!
英雄はむしろ、サムだと思った
祝、アカデミー賞


「ショーシャンクの空に」
何回目かわからないほど、何度も観た映画
マイベストオブムービー