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2003/06/14  安定剤


恋人の家をあとにして、家に帰るのをやめて「8mile」を観ることにした。
映画のあと、すぐに家に帰るのはやめて三越へ寄ることにした。
スタバで、大好きな女の子へのプレゼントを買う。
イプサのホワイトニングキットを予約する。
前からほしいと思っていた、小さいバッグ用のお財布―ツモリのもので、「カタツモリ」というモチーフのついた黒いお財布だ―を買った。
わたしはもしかしたら、買い物依存症なのかもしれない。
給料日までのあと1週間は、おとなしくしていようと思う。






2003/06/13  からん からん


出勤前に、松澤さんが電話をくれる。
(松澤さんとは年がひとまわりもちがうけれど、若くてとてもきれいで、わたしのお姉さんみたいな存在なのだ。)
昨日の愚痴をひとしきり話し、わたしが帰ったあとのことを聞いた。
だけど、夜勤をするのが怖い、ということは、さすがに言えなかった。


仕事のあと、恋人と夢舎へゆく。
大学院の2年である彼は先月、とあるメーカーの研究開発職に就職が決まったので、そのお祝いをすることになっていたのだ。
豆腐とじゃこのサラダ、明太子とチーズのチヂミ、湯葉のピザ、ほたてとベーコンのチーズクリームパスタ。ここは、なにを頼んでもおいしい。
意気揚々としている彼をみて、とても悲しくなった。
まだ学生のころ、「ずっと学生でいたい」とは思っていたけれど、
仕事をすることに対してはそれほど悲観的ではなかった。
不安だったけれど、それ以上に希望があった。
理想と現実のギャップは、いつからこんなに大きくなってしまったんだろう。
そんなことを考えていたからわたしはずっとうわのそらで、
知らず知らずマドラーを弄んでいたら店員さんに誤解を与えてしまったらしく、反省した。






2003/06/12  入梅


朝から、とてもいやなことがあった。
運が悪いのは、いつものことだけれど。
管理職の女に露骨にいやな顔をされ、遠まわしに嫌味を言われる。
わたしは丁重に謝りながら、
心のなかで、下品に生えている彼女の前歯をきっと睨みつけた。
出勤したほかの職員が皆、
「あなたが悪いわけじゃないし、めげないでね」
「あの人たちは、部下をかばうどころか、陥れて楽しんでるんだから」
と、励ましてくれる。


だけどわたしはそんなに強くない。
ヴィツ子に乗った瞬間、年に2,3回しか泣かないわたしもさすがに、
涙を止めることができなかった。


家に帰ると、ゆかちゃんからの2通の手紙が、届いていた。
ゆかちゃんの文字を見たとたん、
くやしさとうれしさのマーブルもようで、胸がいっぱいになった。
お手紙を読み終えたあと、シャワーを浴びて、新潟市へと向かった。
こんな日にかぎって、歯医者の予約を入れていたのだ。
診察のあと、アピタへ行った。
ヴィレッジ・ヴァンガードで魚喃キリコの短編集を買い、
スタバでモカココナッツ・フラペチーノをたのんだ。


帰ってきたのはもう日も暮れたころだった。
ヴィツ子を降りると、雨がアスファルトを濡らすにおいが漂ってくる。
(わたしはこのにおいが、実はとても好きだ)
今度は、華子ちゃんからのお手紙がテーブルのうえに上がっていた。
手紙の書き出しには、「モカココフラペを飲みながらこの手紙を書いているの」とあった。
この絶妙なタイミングやすてきすぎる偶然に、わたしはまた、泣いた。


わたしには、味方がいる。
わたしは、ひとりじゃない。






2003/06/09  雑記


6日 きんようび


夜勤から帰ってきてからは、ひたすらだらだらとしていた。
瀬川くんから借りた、村上龍の「69」を読了した。
昼間は、ずっとねむりの世界にいた。


7日 どようび


休みの前の日にはなぜか、ほとんどねむることができないのはいつものことだ。
睡眠時間、推定4時間。
12時半に、叔母を迎えにいき、芸術文化会館へと向かう。
フジ子・ヘミングのピアノを聴きに行った。
オーケストラとの協奏曲もよかったけれど、
やっぱりソロ演奏とてもよかった。
リストのラ・カンパネラと、別れの曲。
ひさしぶりに、ピアノを弾きたくなった。


*


芸文を出たあと、万代にayuちゃんを迎えにゆく。
鳥はしでつくねを食べ、ja風でお酒を飲み、私の部屋に泊まってもらう。


8日 にちようび


ayuちゃんと過ごした時間は、ほんとうにあっという間だった。
伊勢丹のまえの信号で、さよならをし、また会おうねと、かたく誓う。
そのあと、ひとりでぷらぷらと洋服を見ているときに、携帯が鳴った。
それは母親からで、わたしの勤めている施設の利用者が無断外出をした、
と、連絡網でまわってきたという電話だった。
施設に電話すると、すでに管理職の小林さんが出勤していた。
そこからわたしは、時速90kmで、バイパスを縫うように走った。
7時半から、探すこと4時間。
11時すぎ、その利用者が見つかった。
施設からはかなり離れた場所で。
すごくおなかが減っていたけれど、
家に帰ったらなんだか、なにも食べたくなくなった。
すこし本を読んでから、眠りについた。


9日 げつようび


昨日の疲れがとれなくて、1日じゅう、あくびがとまらなかった。
ほんとうに、だめな社会人だ。
月1,2度しか回ってこない遅番は、阿部さんといっしょだった。
退勤の30分前にはやることがおわってしまい、廊下にしゃがんで阿部さんと話した。
声もまだ完治していないのが、自分でもおかしいと思う。





2003/06/06  キ ラ キ ラ


 
野望は抱いていたほうがいいと、あの子と話していた。
たとえ実行に移すことができないとしても、
頭のなかで思い描いただけで終わるとしても、
持たないよりはずっといいという結論に達した。
わたしは、心のなかで旅をする。
それは、決して悲観的なものではない。
想像には、不可能も、失敗も、後悔もない。
わたしはどこまでもゆく。
どこまでも。






2003/06/04  ヴォイス


依然として、枯れた声は治らないままだ。
声を発するたびに、皆にからかわれている。
声が枯れるといつも、もう永久に治らないんじゃないかと不安になる。
本来の声の出しかたを、忘れてしまいそうだ。


風邪のせいでプールに行けないので、
仕事のあとはだいたい、本を読むかビデオを見るかだ。
最近は、「tokyo.sora」と「まぼろし」を観て、
今日は「ハッシュ!」「火星のカノン」「水の女」を借りてきた。
そのまえに、実習生の日誌にコメントをつけ、評価をしなくてはいけない。
あんまりかわいい子だったので、ほんとは、ぜんぶA評価にしたいのだけど。






2003/06/02  青空のしずく


 
予定のない休日なんて、なくてよかった。
いろんなところへ行って、いろんな人に会って、いろんなものを見る。
そうじゃなきゃ、損をしてしまうような気がしたから。
だから休みとなればわたしはどこかへ出かけた。
週にたった2日のお休みに、ひとりで家にこもっているなんて、考えられなかった。
すこし前までは。


1日を家で過ごすことを心地よいと感じられるようになったのは、
自分にすこしだけ余裕ができてきたことのあらわれだ、と思う。
わたしは、ちゃんとたのしい。






2003/06/01  しずかで、にぎやかな日曜日


運動会は結局、室内で行われることとなった。
いつもより45分ほどはやく家を出て、準備へと向かった。
皆が口々に、「からだはもうだいじょうぶ?」と声をかけてくれる。
だいじょうぶです、ご迷惑をおかけしました。と笑顔で応えて、わたしは両手に道具をかついで養護学校の3階にある体育館までの階段を10往復ぐらいした。


前例がなかったわりには、室内での運動会はとてもうまくいった。
夜は、打ち上げだった。
今日はお酒は自粛しようと心に決めていたのに、そんな決意もむなしく結局飲まされてしまった。おかげで、すっかり声が枯れてしまった。
かえりみちは途中まで、あの子と瀬川くんといっしょだった。
まがりかどで手を振って、わたしの家のある通りへでたときに、あの子からの電話が鳴った。
文化会館の前にあるローソンの駐車場で、同じような背格好のふたりが煙草を吸っているのを見つけ、わたしは足音を立てないように近づいた。一度ばいばいしたのに10分後にまた合流しているという事実に、皆が苦笑する。
友だちとお酒を飲んでいることは、たのしくて、すこしさみしい。
こんなふうに感じるようになったのは、いつからだろう。
それとも、お店に流れていたしずかな音楽―ブラジルのなんとか、というアーティストのものだと、お店のお兄さんが言っていた―や、ゆるりとした空気のせいだろうか。


バイクは、前にしかすすめないんだよ。
いくらうしろを振り返っても、後戻りはできないんだ。


冗談めかして言ったあの子の言葉が、脳裏に焼きついて、離れない。