2003/05-b




2003/05/31  沸騰した記憶のなか


からだが熱いのは、フェーン現象のせいだと思った。
ふしぶしが痛いのは、連日の力仕事と、リレーの練習のせいだと思った。
だけど、ベッドから立ち上がろうとしてもからだが言うことを聞かなかったことで、異変が起こったと確信した。くらりとして、その場に倒れてしまいそうになる。


体温計に表示された自分の温度を見てから、職場に電話した。
夜勤の日だったので、1日分の年休をもらい、夜だけ出勤しようと思ったからだ。
電話を切って、10分ほど経ってから、職場から電話があった。
夜勤は代わってもらうことにしたから、ゆっくり休みなさい。無理してこじらせて、運動会にひびくと悪いから。
電話はそういった内容だった。
「すみません、ありがとうございます」とは、ちゃんと言えたと思う。そもそも、熱のせいで何を喋っていたのかよく憶えていないのだ。


30度を超えるとても暑い日で、だけどそれ以上にわたしのからだも熱くなっていた。熱を出したときはいつも、意識が朦朧としていて記憶も定かではない。まるで、脳の一部分が都合悪く切り取られたかのようにとても曖昧で、こうして醒めてしまったときにいつも、大きな不安に襲われるのだ。


喉の痛みだけが、風邪をひいていた証拠として残っている。
5月が終わる。






2003/05/29  目深にかぶった帽子のうえへ 


 
つよい陽射しが、じりじりと照りつける。
日曜日には施設の運動会があって、その準備でほとんど毎日、外で仕事をしている(その準備も虚しく、当日の予報は雨で室内になりそうだけれど)。
リレーは、利用者も職員もごちゃまぜで、真剣に走る職員もいれば、わざと転んだりしちゃう職員もいる。
「遅いから、走りたくないよ」と、わたしがぶつぶつ文句を言うと、「yukoさんの激走を、しっかり見とくから」と、あの子にからかわれる。
室内で行うことになればリレーはなくなってしまうこともあり、今日は本番さながらの盛りあがりで、わたしはずっと、笑いが止まらなかった。


終わったあとに、「おれ見逃しちゃったよ。」「明日はちゃんと見なきゃ」と、あの子と瀬川くんにさんざんからかわれた。


*


今年はじめてのびわを食べた。
このあいだの新聞に、「びわは下品な食べものとされていた」と書いてあったのを思い出して、こんなにおいしいくだものがどうして下品なんだろう、と思いながら、わたしは3つもぺろりと平らげた。
いちごの季節が終わり、びわが給食に出るようになると、夏が訪れたことを実感する。
だけどわたしは食べるのがへたくそで、エイプのTシャツに橙色のしみをつけてしまった。






2003/05/28  pink rose



仕事は、つらくてたのしい。
作業時間はあの子とふたりで、わたしはばかみたいに、ずっとずっと笑いっぱなしだった。
東北地方で地震があった日、彼は仙台にいたと話した。
それから洋服の話で盛りあがったりもした。
利用者に投げてあげたボールが窓の外へと逃げていくと、
あの子はその細いからだで格子の細い隙間をするりと抜けボールを捜す。
わたしはその様子をひやひやしながら見守る。無理はしないでね、と。
古着の赤いTシャツの背中や日焼けした細く筋肉のついた腕にどきりとしてしまった自分を恥じる。
あなたを信頼してる。
大切でかけがえのない、仲間として。


グラウンドに、あかしやが白いじゅうたんを作った。
薔薇は、ピンク色がいちばん好きだ。





2003/05/27  アイム・ア・オールド・ガール


仕事は、つらくてたのしい。
今は実習生(短大の2年生で、19歳)を受け持っている。
それなりに気は使うけれど、素直でかわいいので何でも許せてしまう。
若いっていいな、なんて、思ってしまう時点でもうおばさんなのかな。






2003/05/25  時よ、止まれ



おのっちのアパートから、お昼ごろ帰ってきた。
寝不足だからか、飲みすぎたからか、めまいにおそわれている。
昨夜は職場の人たち(おのっち、瀬川くん、須貝さん)と、HaNoiで飲んだ。2時間の飲み放題の時間はあっという間にすぎてしまって(飲み物をラストオーダーしたあと、2時間以上も店に居座ったのだ)、おのっちの部屋でジパングを飲みながら、明るくなるまでおしゃべりをした。よく考えてみると、10時間も話していたことになる。みんなどこかあほで、でも仕事はちゃんとできる。そんな人たちに囲まれていることを、とても幸せに思うのだ。6月にまた飲むのが、待ち遠しい。


*


 
昨日の昼間のこと。
お給料が入ったので、ツモリで洋服を買った。
黒いタンクトップには、金色の糸でしかの刺繍が施されている。蛍光色のプリントのカットソー―そでの部分にメッシュが重ねられていて、とてもかわいかったのだ―ととても迷ったのだがこちらにした。それから、重ね着用のブルーのキャミソール。
BP2の前で、ゼミが一緒だった女の子に声をかけられ、近況をすこし話した。
そのあと、ユナイテッドで「愛してる、愛してない」を観た。
(「アメリ」のオドレイ・トトゥがストーカーの役で、とても怖いと思った)
休日はいつも、あっという間だ。






2003/05/22  スウィート・ガールズ


 
たいせつが増えてゆく。
生きていればきっと、これからも。


緑色に染まった小さなグラウンドには、あかしやのあまい匂いがたちこめていた。
来月1日にここで、施設の運動会がある。
今日はその準備として、午前中は利用者といっしょに除草と石ひろいを、午後からはライン引きをした。
頭がおかしくなってしまいそうになるし、理不尽なこともたくさんある。
それでも楽しいと思える一瞬が存在するのは、
あの子がいるからだ、と、気づいてしまった。






2003/05/21  闇のなかで


クズはクズらしくしてなさい。




あかるい朝に浴びせられた衝撃的な言葉。
怒りや悲しみがこみ上げる以前にわたしはただただ驚いてしまって、
なにも言わず家を出た。




だけど、侮辱されることにはもう、慣れっこだ。
幼いころからいつも、そういう言葉を投げつけられてきたじゃないか。
そう思ったらすこしだけ、楽になった。


そうだ、わたしは決めたんだったよ、もうずっとまえに。


星屑になる、と。


たとえ誰も、気づいてくれなかったとしても、


何万光年という遠い遠い夜空で儚く瞬きつづける、
星屑になると、決めたのだ。






2003/05/20  裏側にある「それ」


そのお薬のおかげで、激しいかみなりにすら気づかなかった。
けたたましい携帯のアラームが6時半に鳴り出すまで、
深い深い海の底で、じっとしていたのだ。


月曜日から、実習生を受け持っている。
仕事は、楽しかったりつらかったりでこぼこだ。






2003/05/19  おくすり


仕事の帰り、近くの内科でおくすりをもらってきた。
わたしを眠りの世界へ連れていってくれるその薬を手にしただけで、すこしだけ安心した。
今日は1日じゅう、気力だけで立っていた。


目を、思考を、ぱたりと閉じる。






2003/05/18  泡のごとく


好きなことをしているときや、だいすきな人たちといるとき、わたしは非現実のなかにいる。
週に2日、わたしは鉄格子のなかから解き放たれ、自由を得る。


*


昨日と、今日、まどかちゃんと、千葉に住むさきちゃんのところへ行ってきた。
昨日は、舞浜駅のドトール前でさきちゃんとまちあわせ、TDLに行った。
前に来たのは15周年のときだったので、実に、5年ぶりの夢の国。
プーさんのハニーハントにははじめて乗ったし(ファスト・パスに1時間も並んだのは、他のどの乗り物にふつうに並んだよりも長かった)、ビッグサンダ―・マウンテンのコースががらりと変わっていたことに驚いたりもした。
昼のパレード、ギフト・オブ・ドリームス、エレクトリカルパレード、すべてがすばらしく、わたしたちはかわいい、かわいいと大騒ぎした。


今日は、仕事があるというさきちゃんと駅でいったんおわかれして、ふたりで六本木ヒルズへ。思ったよりも混んでいなかったけれど、あまりの広さに何度も迷子になってしまった。東京は、やっぱりすごいなぁと思った。
ZUCCaのカットソーに心を奪われつつもがまんして、お昼はスープストックトーキョーで食べた。
上野駅に見送りに来てくれたさきちゃんと、また会おうね、と約束を交わし、新幹線のホームへと、長いエスカレーターを降りてゆく。


*


トンネルは現実との境界線で、わたしはまた、いつもの場所へもどる。
まどかちゃんとは、新潟駅で別れた。
執行猶予のついた2日間が終わり、また、わたしの手首に手錠がはめられる。
明日の朝になればわたしは、ジャージを着て、スニーカーを履いて、ヴィツ子に乗りこむのだ。
夢の世界からそっと持ちかえったかけらを、今胸にしまう。





2003/05/16  よいとか、わるいとか 


まっとうな仕事ってなんだろう。
そのいわゆる、「まっとうな」仕事をしていればよい人間なのだろうか。
そうではない人は、だめな人間?
仕事や地位で判断されるなんて、まっぴらごめんだ。